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涙の跡が残るその白い頬を撫でる。
この不衛生な場所にあってすら、彼の肌は汚れを知らなかった。
泥に汚れても血にまみれてもいつまでたっても柔らかい頬。
汚れないのは、彼の精神故だろうけど。
今ですらタケルの白く穢れた液体を体内だけでなく肌に飛び散らせ、所有の証である赤い鬱血痕を身体中に残されているのに。
気を失っているヤマトの表情は酷く無垢だった。
睫毛の落とす影は子供のそれと同じだった。
不釣り合いに残る涙の跡を舌で舐めとって清めてやる。
「泣かせてばっかやな、俺」
どんな問題に直面してもそうそう涙を流さない男が、このテントで夜を明かす度泣いて叫んで怯えて。
傷付けている、と何処か遠い感覚で思った。
それでも俺はヤマトを手放せないし、ヤマトも俺がいなければならない事を感覚で知っている。
彼自身がそれを拒んでも覆す事の出来ない事実だった。
白い頬を綺麗にすると意識のない筈のヤマトが小さく息を吐く。
無防備に唇を開いて、タケルの方へと擦り寄った。
それはきっと体温を求める人間の無意識故の行動だろう。
けれど、胸が酷く軋んだ。
濡れて張り付いた髪を梳いてやると、うっすらと唇が笑みの形になる。
夢を、見ているのかも知れない。
彷徨って伸ばされた彼の手を緩く握って、願う。
ヤマトの夢に出て来る自分が優しいと良い。
彼の望む事を何でも叶えられれば良い。
黙って隣にいて、必要な時には必ず助けられる様な。
彼だけのスーパーマンの様な。
自分にはもう、そんな優しい夢等見せられないから。
2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)
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