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「たーくろーさーーん。飲んでますかぁ?足りてますー?」
なんて、ろくに呂律も回らない彼が背中から負ぶさって甘えて来る。
(こりゃ、相当酔ってんな)
可愛い彼に抱きつかれて嬉しくない訳がない。
赤く染まった目元とか首筋をくすぐる柔らかい髪だとか、ふわりと香る甘い香りとか。
その全てが心地良くて手放せない点は、否めない。
俺は、光一が可愛くて可愛くて仕方ないんだよ。
恋人の様に我が子の様に、親友として仕事仲間として。
彼が好きで好きで堪らないのだ。
「こら、こぉいち」
そろそろ来るかなと思っていたら、やっぱり来た。
べろんべろんに甘えている光一を引き剥がして、定位置である腕の中に戻すと、剛は子供の様に笑い掛けた。
こんな顔も出来る様になったんだなあ。
昔はもっと必死で、男臭い表情ばかり見ていた気がするのに。
最近は余裕と言うか、甘える事のバランスを覚えたと言うか。
剛はくるくると表情を変える。
「おい、剛。こいつに注がれ過ぎて飲めないんだよ。ちょっと付き合え」
光一を抱き留めたままでいる剛に声を掛けて、隣の席を勧める。
「あ、じゃあこいつ、あっちの方に寝かして来ます」
「いいよ、お前が抱えとけば。その方が光一も安心だろ」
「いや、でもこの体勢は……」
「今更だろ、そんなの。皆知ってるって」
「つぉしー。お酒ー」
「はいはい、酔っぱらいに飲ます酒はありません。これ飲んどき」
器用に光一を抱えたまま席に着いた剛は、その酔っぱらいに水を渡している。
膝に乗せられた光一は、文句も言わずにグラスを両手で抱えて大人しくなった。
「相変わらずさすがだなあ」
「酔っぱらいの扱い見てさすが言われてもねえ」
苦笑を零しながらもグラスを受け取った剛は、昔よりも上手に酒を口にする様になった。
「あんなガキだったのになぁ」
「たくろーさん、いつの話してるんですか」
「お前ら見る度に思うよ、ホント。硝子の少年達が良くもまあここまで立派になったもんだな」
「周りにおった大人のおかげですわ」
「良く言うよ」
その大人を信じられなくてぼろぼろになっていたのに。
いつの間に立ち直り、こんなに強くなってしまったのか。
「つよぉ」
「はいはい。もぉええの?」
「……う」
握り締めていたグラスを突き出して、そのまま剛の肩に懐いた。
完璧に出来上がっている光一は、普段のしっかりした印象は幻だったんじゃないかと思う程、ふやけている。
それを見詰める剛の目の優しい事と言ったら。
「すっかり万年新婚夫婦みたいになっちまって」
「たくろーさんとこやってそうやないですか」
「ウチの事は良いんだよ! ……けど、まさかお前らが本気でくっ付くとはなあ」
「そうですか?
「ああ、お互い恋愛感情持ってても絶対言わないと思ってたよ。光一は頑なだし、お前は臆病だし」
「ははは」
乾いた笑いを漏らす剛は、あの頃から変わらない繊細さを、今ではすっかり武器に変えてしまっている。
「俺が思ってたよりもお前は現実見てたんだな。んで、こいつは思ってたより弱かったんだなあ」
「光一は強いですよ。唯、俺との事になると不安になるだけで」
「お前それ、ノロケにしか聞こえないよ」
言ってやると更に上手の微笑が返って来る。
「誰がこんな男にしたんだ!!」と言いそうになって、今まさに腕の中にいる相方が張本人である事に気付いた。
「……まあ、でも付き合う前も後もあんま変わらないですけどね」
不意に剛が弱気な言葉を漏らす。
このアンバランスさが彼の魅力だという事は分かっていたけれど、思わず真剣に返してやろうという気になってしまった。
「お前らは、相方以上恋人未満みたいな時期が長過ぎたんだよ。今更馴染んだ扱いをそうそう直せるもんじゃないって」
友人に幼馴染み同士で結婚した奴らがいるが、結婚してもその関係は余り変わらなかった。
それでも心の中に相手への恋情があったのは確かだ。
彼らもきっと同じだろうと思う。
「大体、光一は元々感情表現苦手な奴だろう。それ位多めに見てやれよ。……大丈夫、何処どう見たって光一が剛を好きなのはあからさまだよ」
時々閉口したくなる位に。
既に半分以上夢の住人になっている光一の頭を撫でてやった。
どんなにこちらが愛情を示しても彼の感情が向くのはたった一つで。
それが時々寂しいけれど、そんな彼が好きなのだとも思う。
彼の愛情を一身に受けている剛が穏やかに笑えるのも、良い事だと思うし。
何処にも間違った恋愛なんてないと、彼らを見ながら思うのだ。
俺は、不器用に恋愛をしている彼らが可愛くて可愛くて仕方ない。
2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)
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