[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
- Newer : halfway tale 15
- Older : halfway tale 13
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
じっと見詰められて、柔らかくキスをされて、優しく服を脱がされて。
何も言葉を交わしていないのに、剛の指先一つ掬い上げる眼差し一つで大切にされているのが分かる。
愛しいものを愛しいと言う様な、単純でとても分かりやすい動作だった。
ベッドに押し倒されて、光一は静かに溜息を漏らす。
心が苦しいと、訴えている。
愛される事も大切に扱われる事も、自分は得意じゃなかった。
振り返らない背中を気付かれずにそっと守る方が得意だったから。
だから、苦しい。
「どしたん? ……やめる?」
「……な、んで」
「眉間」
皺寄ってるで、と額を突ついて笑う。
優しい笑顔。
胸が詰まって呼吸出来ない。
剛。
剛。
そんなに優しくしないで。
「やっぱ、やめよか」
光一の答えを待たずにベッドから抱き起こして、脱がせたシャツのボタンを同じ仕草でゆっくり留めて行く。
「……つよし? ええよ?」
「こんな光ちゃんと出来へんわ」
「なんで」
「苦しい顔、してるやろ。したない訳やないやろうけど、」
無理矢理やってるみたいで俺が嫌やねん。
抱き起こした事を光一の為ではなく自分のせいにして。
また、優しく笑う。
剛。苦しい。
苦しいよ。
「でも、一緒に寝よな」
羽毛の様なキスを頬に落として、光一の身体を毛布で包んでしまった。
光一はいつも寒そうやね、と静かに笑う。
「寒くなんかあらへんよ」
「そぉか」
「剛、が、いるから、」
「そやね」
くっきりと笑って、それから一緒に横になった。
光一は夢を見る。
苦しくて甘くて、悲しい夢を。
剛が一度も振り返らずに、歩き続ける夢。
自分の事を罵って嘲って、もう要らないと無造作に捨て去る夢。
それでも彼を思い続ける自分を。
ずっとずっと、歪んだ愛を求めていた。
優しくされる恐怖に怯えていた。
眠りながら涙を零す光一を剛は抱き締める。
「お前は、まだ分かってへんだけやよ……」
耳元で囁いた言葉が、早く彼に届けば良い。
2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)
COMMENT
COMMENT FORM
TRACKBACK