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2025/05/25

halfway tale 21

 堂本光一との関係を聞かれる時、迷わず『相方』と答える事が出来る。
 それ以上でもそれ以下でもない関係だったから真っ当な答えと言えるだろう。
 けれど、どうしても説明の付かない感情の動きが自分の中に確かにあった。
 意識しなければ見過ごしてしまう程の心音の変化。
 楽屋の畳の上に仰向けに寝転んで、空き時間を持て余しながら剛は『相方』の事を考えていた。別の仕事で遅れている光一は、まだ来ない。
 もう長い事寄り添って支え合って生きて来た、大切な人。
 運命よりもずっと切実に繋がって来た関係だから、執着してしまうのも仕方ない事だと思う。
 それでも。
 割り切れないこの感情を、近くて遠い彼との関係を何と説明すれば良いのだろう。

 親友と呼ぶには、独占欲が強過ぎる。
 家族と呼ぶには、距離が近過ぎる。
 相方と呼ぶには、余りにも彼だけに目を奪われ過ぎていた。

 一番相応しい感情を本当は知っている。

 けれど、『恋人』と呼ぶには--。

「光一にそんな感情ある訳ないわなー」

 寝返りを打ちながら深く溜息を吐いた。
 自分のこの、光一と一緒にいる時に目覚める感情は、恋愛感情に分類されるべき物だと思う。
 今まで数え切れない程の恋愛をして来たから間違いない。
 でも、この思いが一方通行であるのもまた間違い様のない事実だった。
 光一は一番大切なものを慈しむ目で剛を見るけれど、それは『相方』の優しさだ。
 一線を越えようとする心の揺れなんて一切ない。
 分かっている。分かっているけれど。
 気付いてしまった恋心を簡単に消す事は出来なかった。

 疲れて眠っている光一にキスしたいと思った感情は、余りにリアル過ぎて笑えなかった。
 どんな女の子より可愛く見えて、大切に閉じ込めて甘やかしてやりたかった。
 少なくとも男相手に抱く感情じゃない。
 不毛な恋をしたものだと自嘲して、また溜息を吐いた。
 それでも、好きなのだ。
 相方よりもずっと深く、世界中の誰よりも大切にしてやりたい。

 親友よりも家族よりも相方よりも、深く。
 繋がっていたかった。


 今振り返れば可愛い葛藤をしていたものだと笑えるのだけれど、10代の剛には自分の感情と折り合いを着ける事で精一杯だったのだ。
 ほんの少し視線を転じれば、苦しそうに歪む口許だとか、困った様に握り締められた手だとかに気付けただろうに。


 お互いに幼かった、恋愛の自覚症状以前。





熟年夫婦を書くのも楽しいけど、こーゆーもどかしい時期も大好物です☆

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2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)

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