[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
- Newer : halfway tale 21
- Older : halfway tale 19
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ハワイの夜は、東京と違ってちゃんと暗い。
時間の流れすら分からなくなる生活をしている人だから、遮光カーテンのない部屋で過ごせるのはとても貴重な事だと思う。
とても、大切な時間だった。
「つーよし」
ベッドの上から怠惰に呼ばれて、ベランダで煙草を吸っていた剛は、月光を受けてゆっくり振り返る。白いシーツの中で猫の様に丸くなっている光一が可愛かった。
「なん? 目ぇ覚めた?」
ほんの少し前まで触れ合えなかった時間を埋める様に抱き合ったから、まだ目覚めないと思っていたのに。
月光を映した光一の瞳は、思ったよりはっきりしていた。
「波、音する」
まだ少し寝惚けた口調で外を指差す。その仕草が、鎖骨の際に付けられた鬱血痕と妙なアンバランスを生み出していた。
艶かしい様で幼子の様で。
「そやね、ここ海近いもんなあ」
「ええなあ。涼しい部屋やし」
「光一さん、そればっかや。外の暑さも結構ええもんやで」
「えぇー涼しいのが良い」
「そんな事ばっか言っとらんと。おいで」
うーうー唸りながらも素直に起き上がった光一が、好きだと思う。
言う事を聞く様に育てたのは間違いなく剛自身なのだけど、あんまり素直に受け止められてしまうと、ちょっと照れ臭かった。
やはり全裸は気が咎めるのか、シーツを巻き付けてベランダに出て来る。
煙を気にするかと思って、まだ長い煙草を灰皿に押し付けた。光一は煙草を吸える時と吸えない時があって、今は吸えない時期だった。
それは彼にとって苦しくない時期だから、単純に良い事だと思う。だからなるべく煙草の味を忘れていられる様に煙を遠ざけた。
「うわー、ほんまにこの部屋海見えるんやなあ」
「お前、此処まで来てへんかったん?」
「うん。マネから聞いてたけど」
「……一人やったもんなあ」
剛は終わっていない打ち合わせがあって、この部屋で二人になったのは夜になってからだった。
それまで光一は一人だったから、仕方のない事なのかも知れない。
外界を極端に怖がる人だから。
「剛が明日は一緒おってくれるんやろ?」
収録が終わってから帰るまでに少しだけ自由時間をもらえた。いつもはホテルで寝たまま過ごすだけなのだけれど、剛が機嫌良さそうにショッピングに誘うから。
楽しいかも、なんて思ってしまったのだ。
剛と一緒なら、人混みも視線も怖くない。
「お土産一杯買うてこな」
「俺、そんな買ってく人おらへんわー」
「光ちゃんにお土産買ってくねん」
「一緒に来とんのに、それちゃうやろー」
「やってお前放っとくとマガダミアチョコしか買わなそうなんやもん」
定番のお土産をお世話になっているスタッフ分マネージャーに買わせて終わり、が彼の常套手段だった。
別に悪い事だとは思わないけど、ちょっと寂しいなんて剛は思ってしまう。
シーツを纏ったまだ細い身体を後ろから抱き寄せて、項にキスを落とした。
「新しいジーンズでも買うたろか」
「そんなん自分で買うわ」
「ええって。明日はおじちゃんが全部買ったるから、光ちゃんは手ぶらでええよ」
「っもー! お前甘やかし過ぎや!」
抱き締めて背骨を辿る様に口付けて行くと、くすぐったそうに暴れ出した。
「ええやん。労ってやりたいねんもん」
「ちょっ! 此処じゃやらんって」
「あ、それええな。青姦なんて久しぶりやなあ」
「ベランダでやんのは青姦ちゃうって!! こら、剛!」
舞台で酷使した身体は可哀相な位に痩せていて、自分に出来る事なら何でもしてやりたかった。
優しく溶かして、身体の境界線すら曖昧にさせて。
「も一回やろか」
小声で囁くと、今更の様に頬を染めて首を振った。
「やらんの?」
「此処じゃ、嫌」
また可愛い事を……。
隣は自分の部屋だし、此処は確か角部屋だから何処からも分かる筈がないのだけれど。
モラリストの光一に頷いてもらえる訳がなかった。
仕方なくベッドの中に戻って、もう一度どろどろに蕩けるまで、光一の世界が剛だけになるまで、優しく愛撫した。
2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)
COMMENT
COMMENT FORM
TRACKBACK