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人はゆっくりと変わって行く。
それは、良い事でも悪い事でもなく当たり前の事だった。
本人が変化を望まなくても日々を蓄積すれば、必ず何処かが変わる。
光一は怯え惑いながらも変わって行く自分を受け入れようとしていた。
大人になったなと思う。
光一も眠る夜中(それはもう明け方の域だったが)に彼の部屋に勝手に上がり込んだ。
自分の部屋でギターを弾いていたらどうしても会いたくなってしまったのだ。
こんな衝動だけで動く事なんて、今では余りない事だったのに。
不安定な季節のせいだろうか。
不意に暗くなる空や寝苦しい湿度が、少しずつ体内時計を壊している様な気がする。
枕許に屈んで、寝入っている光一の無表情な寝顔を見詰めた。
テレビや雑誌で笑顔を振り撒いているせいだろうか。
こうして家にいる無自覚な時間程、彼は表情を失う。
嬉しい事も悲しい事も分からない顔をした。
それが嫌で彼と夜を共にしても帰ってしまう事が多い。
光一の寝顔を見ながら色々思い巡らす自分が嫌だった。
彼を、変えてしまったのは俺なのだと思い知るのが怖かったから。
色のない表情、お人形の様に体温を感じさせない。
乾いた細い髪を掬って、そっと掻き揚げた。
露になる広い額に口付ける。
彼を誰よりも早く大人にさせたのは、間違いなく自分だ。
俺の弱さが彼を急かした。
本当は、もっとゆっくり色々な事を知って色々な物を見て大人にならなくてはいけなかったのに。
光一は唯俺だけの為に、脇目も振らずに強くなった。
ごめんなさい、と今は強く思う。
大切にしなくてはならない事が、沢山あったのに。
もう彼の時間は戻らない。
何処かに大切なものを置き忘れて大人になった光一は、人を見詰める優しさばかり。
堂本剛を大切にする術ばかり覚えて、自身を労ってやれない。
あの、暗い闇の底から救い出されてやっと息が出来る様になった頃には気付けなかった。
唯ひたすら俺を掴んだ細い腕が強く見えて。
彼だけだと、強く束縛した。
俺を救う為に存在する人間等あってはならなかったのに。
光一をそう言う人間にしてしまった。
誰に裁かれなくても俺は罪深き人間だと思う。
彼を、狂わせてしまった。
頬に触れ、冷えてしまった肌を暖める。
低体温の癖に、相変わらず空調はきつかった。
本当は、可愛い奥さんを貰って幸せな家庭を築ける人だ。
愛情を沢山抱えている人だった。
それなのに。
彼の目は、もう自分以外向けられる事がない。
俺がそういう風に束縛してしまった。
苦しかったあの頃に、お前が俺を見詰めていないと生きて行けないと脅迫したのだ。
光一が此処におるなら、俺ん事だけ考えてくれるなら。
生きてもええよ、と。
何て傲慢だったのだろう。
そんな風に彼を雁字搦めにして、周囲から差し伸べられたどんな手も光一は取らなくなった。
剛の為にこの手は空けておかなくちゃいけないからなんて。
何でもない事の様に言い切った彼の強さといたいけさ。
無防備過ぎる人だった。
愛してくれなきゃ生きられないなんて戯れ言を。
彼だってそれが本気じゃない事位、もう分かっているだろうに。
今もまだちゃんと愛情をくれる人だった。
それすら苦しいと言ったら、彼は苦しむだろうか。
晒された寝顔を見詰めて、それから飽き足らずにキスをした。
何処にも行かないでと言った自分が、此処から逃げ出したくなっている。
光一の真っ直ぐな愛情が痛かった。苦しかった。
引き留めた自分がこの心地良い鳥籠から出て行きたいなんて。
そんな我が儘すらきっと感受するだろう恋人の身体にシーツを掛け直して、また静かに部屋を出て行った。
まるで此処は楽園だと、苦しい心で思う。
罪を背負って辿り着いた場所が楽園だなんて、何て滑稽なんだろう。
泣き出す気持ちを持て余して、優しい部屋から逃げ出した。
俺はまだ、お前の様に大人になれない。
最近は穏やかだと思うので、ちょっとこれは邪推ですね(^^;
彼らはちゃんと幸せだと思いますよ。
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2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)
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