忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2025/05/25

halfway tale 49





 いつも一緒に歩いていた。
 離れそうな時も離されそうな時も、離したくなった一瞬さえ手を繋いでいた。この手を、もう離したくない。誰に何を言われても、例え望まれない関係でも構わなかった。
 俺はもう、迷わんよ。
 此処まで一緒にいられたのだ。後悔も懺悔も胸の内にあるけれど、未来を夢見たかった。
 お前と一緒の、優しい明日を築いて行きたい。
 舞台の裏は薄暗く埃っぽかった。空気を震わす程の大歓声は耳に痛い位なのに、今剛と二人でいる階段は静寂に包まれている。
 年が明ける前の一瞬。自分が生まれたその日。
 ずっと剛と一緒に過ごして来たけれど、こんな風に仕事中とは言え二人だけで迎えるのは初めてだった。粋な計らい、と茂君は笑っていたけれど。KinKi Kidsが10周年を迎える為の演出以外の優しさが其処には滲んでいる。
 もう、こんな所まで来たのだ。28歳と言う年齢も10周年と言う区切りも余り実感はなかった。
 唯、分かるのは今も隣に愛しい人が変わらずに在る事。無くしたくないと必死に繋ぎ止めていた存在が、この手の先に在った。
 嬉しいと思う感情は、もしかしたら自分だけかも知れない。こうして二人で年を越えられるのも、誕生日を迎えられるのも。
「光一」
 静かに呼ばれて、隣を振り向く。ステージの上ではカウントダウンが始まっていた。30秒前。
「なん?」
「手、」
 そんな風に確認しなくても、指先が触れれば繋ぐ事は出来るのに。瞳を合わせて問われるままに、手を差し出した。
 剛は優しい表情を見せて、その手を恭しく取る。忠誠を誓う騎士の様に、手の甲を上にして胸の辺りまで持ち上げられた。
 10秒前の声。客席の歓声も大きくなり、舞台裏も大音響に包まれる。
 けれど、此処に在るのは静謐だった。他者を介在させない、二人だけで築き上げて来た空間。
 スタッフが大きな声を上げる。ステージに出るまで後僅か。身体は勝手に動くけれど、剛に囚われた右手はそのままだった。
「これからもずっと、一緒やで」
 手の甲にそっと口付けられる。確かめる行為は、確実に自分を安心させた。今までも、これからも。愛している、と声には出せないけれど深く思った。
 この人だけをこれからもずっと、愛し続ける。
 ステージの上では大きな音。それに紛れるように離れて行く手。代わりに渡された言葉。いつも、誰よりも先に聞きたい声。
「誕生日、おめでとう」
 指先を離して視線を前に向けて、階段を駆け上がる。そっと、右手の熱を忘れない為に同じ位置に唇を重ねた。
 この先も、ずっと。剛の傍で生きて行きたい。



光一さんお誕生日おめでとう。……遅過ぎますね(^^;



←back/top/next→

拍手[8回]

PR

2011/02/11 halfwaytale Trackback() Comment(0)

COMMENT

COMMENT FORM

NAME
MAIL
WEB
TITLE
COMMENT
PASSWORD

TRACKBACK

TRACKBACK URL :
カレンダー
 
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
 
 
リンク
 
 
 
カテゴリー
 
 
 
最新コメント
 
 
 
最新記事
 
(02/11)
(02/11)
(02/11)
(02/11)
(02/11)
 
 
プロフィール
 
HN:
椿本 爽
性別:
女性
 
 
バーコード
 
 
 
ブログ内検索
 
 
 
アーカイブ